
こんにちは。薬剤師のかずまです。
今回は避妊失敗時における緊急避妊薬(ノルレボ)に関する記事を書いてみました。
避妊などの性の知識はあると無いとでは対処法の選択肢がかなり変わってくると思います。
薬剤師として、緊急避妊薬の有用性・知識を少しでも皆さんと共有できたらと思い、この記事を書きました。是非最後まで読んでいって下さい。
※緊急避妊薬は「モーニングアフターピル」や「性交後避妊」などとも呼ばれますが代替用語を使用すると混乱するので、この記事では「緊急避妊薬」と表記しています。
目次
緊急避妊薬ノルレボって何?効果や入手法
※「緊急避妊薬(ノルレボ)」
皆さんは聞いたことがありますか?

「緊急避妊薬」とは、上手く避妊ができなかった場合等に性交後に使用される薬剤の事です。
作用機序は明確には判明しておりませんが、主に有効成分のレボノルゲストレル(黄体ホルモン剤)が体内の黄体形成ホルモン(LH)に影響する事で排卵の阻害・遅延を引き起こすからだと考えられています。
もう答えは言ってしまいましたが、今の日本では知らない人や聞いた事のない人がまだまだ多いです。また、聞いた事があっても正しい理解のある人はとても少ないですね。
そんな日本の現状を少しでも変えたいと思い、今回の記事を書きました。
今回は日本で唯一緊急避妊薬として承認されている「ノルレボ」というお薬について記事を書いています。
緊急避妊薬(ノルレボ)入手法
入手方法:病院(産婦人科やレディースクリニック等)
残念ながら、日本の通販やドラッグストアでは取り扱いは無く入手できません。
海外通販であれば輸入代理店を介して仕入れることも可能です。
しかし海外通販では自己判断となり安全性が大きく欠けるため、薬剤師としても私個人としてもオススメできません。
日本でのノルレボには使用指針(日本産婦人科学会)があるので、避妊に失敗したからと言って安易に自己判断で使用しない様に注意が必要です。
〜 使用指針の具体例 〜
- 最終月経の時期
- 持続日数・通常の月経周期日数から予測される排卵日
- 最初に無防備な性交(UPSI)があった日時、その時の避妊法
- 無防備な性交(UPSI)があった期日以前の性交があった日時とその際の避妊法
(日本産婦人科学会の使用指針から作成)
この様に、日本産婦人科学会の使用指針に処方前に行うべき問診と検査等が挙げられています。使用の際はしっかりと専門医に相談した上で使う様にしましょう。
また、避妊薬(ピル)などの使用を考えている場合、上記の様な情報はほぼ確実に必要になってくるものです。
自分(又はパートナー)の月経周期等の管理はしっかりと行っておきましょう。
ノルレボの使用方法
こんなにきっちりした時間が決められていると72時間を超えると全く効かないのかと気になりますよね。。でも安心して下さい!
ノルレボは72時間以内を基準にデータが取られているのでこの様な書き方になっているだけで、
実際の臨床検査では120時間以内でも効果のある例が一定数存在します。なので、きっちり72時間でなくとも120時間以内であれば少なからず有用性はあるとみられているのです。
※焦らずしっかり専門医に相談し、状況に応じた正しい使用法を選択してもらって下さい。
実際の有効率と避妊成功率は?
ここは皆さんかなり気になるところですよね!
実際の臨床試験のデータを使用してご紹介します。
〜 実際の有効率・避妊率 〜
- 実際の有効率98.6%
- 回避された避妊率83%
(下記の文献1参考)
驚きの有効率と避妊率ですよね!!
さらに、有効率がこの高さでおきながら従来の緊急避妊法より副作用発現は軽いのです。
日本で承認されたのも納得できる数値とデータでしたね。
※このデータは緊急避妊薬使用後に性行為をしなかった時のもので、緊急避妊薬使用後に性行為を行うと数値が下がってしまうと言うデータも一緒に出ているので注意しましょう。
使用上の注意

副作用
〜 主な副作用 〜
- 悪心(23%)
- 下腹部痛(18%)
- 頭痛(17%)
- 嘔吐(6%)
(下記の文献2参考)
上記でも少し触れましたが、ノルレボは従来の緊急避妊法で使用されてきた薬剤より副作用発現もかなり抑えられています。
ノルレボで最多の悪心(23%)は多い様に見えるかもしれませんが、ノルレボが承認される前の緊急避妊法における悪心は約50%もあり半分以下くらいにまで発現率が下がっているんですよ。
とはいえ個人差はあるので、十分に注意しながらの使用が大切ですね。
使用出来ない人
ノルレボには使用できない人や気をつけて使用しなければならない方がいるので、一緒にここで確認しておきましょう。
上記に該当する人は基本的には使用できません。
又、心疾患や腎疾患などの場合にも慎重投与となっており、注意が必要になってくるので注意が必要です。
基礎疾患や上記疾患の既往歴がある方は使用できない場合や量の調整などの管理が必要になることがあるのです。
やはり自己判断での使用・購入はとてもリスクを伴います。しっかりと専門の医師と相談・検査した上で使用して下さい。
まとめ
- 緊急避妊薬(ノルレボ)は性交時避妊に失敗した時後から使用可能な避妊薬
- 入手する場合は基本的に病院(産婦人科・レディースクリニック)が安全で無難。※海外通販等は安全性に欠けるので自己判断で使用しない
- 基本的には性交後72時間以内が有効(120時間以内の有効報告例もあり)
- 有効率98.6%、避妊率83%と効果における実績は十分期待できる
- 主な副作用として悪心、下腹部痛、頭痛等があるが従来の避妊薬よりかなり軽減されている
- 使用出来ない人もいるので注意(過敏症の既往・肝障害・妊婦)
今回は緊急避妊薬(ノルレボ)の記事を書きましたが、いかがでしたか?
少しでもこの記事が性の知識としてプラスになってくれていると幸いです。

【参考文献】
文献1:von Hertzen H, Piaggio G, Ding J, Chen J, Song Si, Bartfai G, et al. Low-dose mifepristone and two regimens of levonorgestrel for emergency contraception: a WHO multicentre randomised trial. Lancet 2002; 360: 1803-1810
文献2:Task Force on Postovulatory Methods of Fertility Regulation. Randomised controlled trial of levonorgestrel versus the Yuzpe regimen of combined oral contraceptives for emergency contraception. Lancet 1998; 352: 428-433